A.記録の仕組み
磁気記録媒体は、磁性体の微小な領域の磁化の向きに情報を書き込む仕組みです。方式は大きく「記録の向き」と「信号の符号化」の2つの観点で整理できます。
1. 基本原理
磁気記録媒体(HDD、磁気テープ、フロッピーディスクなど)の表面には、微小な磁石の粒(磁性粒子)が敷き詰められています。
書き込み:磁気ヘッドのコイルに電流を流すと磁界が発生し、その下を通る媒体の磁化の向きを変える。電流の向きを反転させれば、磁化の向きも反転する。
読み出し:媒体が動くと、磁化の向きが変わる境目(磁化反転)から漏れ磁界が生じる。これを磁気ヘッドで検出し、電気信号に戻す。HDDではGMR(巨大磁気抵抗)やTMR(トンネル磁気抵抗)素子が使われる。
情報は「磁化の向きそのもの」ではなく、**「磁化の向きが変わる場所(反転)」**で表現するのが一般的です。
2. 記録の向きによる分類
水平(面内)磁気記録方式(LMR)
磁化の向きが媒体の表面と平行。隣り合うビットの磁化がN極同士・S極同士で向き合うため、記録密度を上げるほど反発し合って磁化が不安定になります。
←→ ←→ →← ←→
(表面に沿って寝た向きの磁石)
垂直磁気記録方式(PMR)
磁化の向きが媒体の表面と垂直(上向き・下向き)。隣り合うビットが互いに安定する向きに並ぶため、高密度化に有利です。2005年頃からHDDで主流になりました。
↑ ↓ ↑ ↑ ↓
(表面に対して立った向きの磁石)
さらなる高密度化技術
SMR(瓦記録):トラックを瓦のように重ねて書き、トラック密度を上げる。
HAMR(熱アシスト記録):レーザーで局所的に加熱して保磁力を下げ、書き込む。
MAMR(マイクロ波アシスト記録):マイクロ波で書き込みを補助する。
3. 信号の符号化方式(0と1の表し方)
磁化の向き(上/下)と、デジタルの0/1の対応づけにもいくつかの方法があります。
現在は、反転間隔に制約をつけて効率よく記録するRLL(Run Length Limited)系の符号や、読み出し時の誤りを統計的に補正するPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式が使われています。
4. 具体例:HDDでの流れ
データを符号化(RLLなど)し、誤り訂正符号を付加する
書き込みヘッドの電流方向を切り替え、ディスク上の磁化を反転させて記録する
読み出し時はヘッドが磁化反転を検出し、PRMLで0/1を判定する
誤り訂正を行い、元のデータを復元する
B.どの程度の密度分布になるのか?
「密度分布」は、記録密度(面記録密度) と、その内訳である線記録密度・トラック密度のことと解釈して説明します。
1. 記録密度の基本
面記録密度は、次の2つの積で決まります。
面記録密度 = 線記録密度(BPI)× トラック密度(TPI)
BPI(Bits Per Inch):1本のトラック上で、進行方向に何ビット並ぶか
TPI(Tracks Per Inch):半径方向に何本のトラックが並ぶか
単位は Gbit/inch² または Tbit/inch² で表します。
2. 年代ごとの面記録密度(HDDの例)
約70年で約10億倍に高まったことになります。
3. 現在の密度の内訳(概算)
面記録密度を約1.5 Tbit/inch² とすると、典型的には次のような値になります。
線記録密度:約2,500〜2,800 kBPI(1インチに約250万ビット)
トラック密度:約500〜600 kTPI(1インチに約50万トラック)
これを長さに換算すると、
ビット長:約10 nm 程度
トラック幅(ピッチ):約45〜50 nm 程度
となり、1ビットの大きさは約10 nm × 50 nm という極めて小さな領域です。1ビットあたり数十個程度の磁性結晶粒(粒径約7〜8 nm)が含まれる計算になります。
4. 密度分布が一様でない点
実際のディスク上では、密度は完全には一様ではありません。
ゾーンビット記録(ZBR):外周は円周が長いので、外周ほどセクタ数を多く割り当てます。ディスクの回転数は一定なので、外周ほどデータ転送速度が高くなります。
線記録密度はほぼ一定、角度あたりのビット数は外周で多い:ゾーンごとに段階的に密度を調整しています。
内周側は密度の限界がある:円周が短く、角速度の影響や信号品質の制約があります。
5. 密度の限界
密度を上げる際の壁は、超常磁性限界(熱ゆらぎで磁化が自然に反転してしまう限界)です。粒子が小さくなると熱に弱くなるため、
保磁力の高い材料(FePtなど)を使う
書き込み時にレーザーで加熱する(HAMR)
といった対策が必要になります。HAMRでは2〜10 Tbit/inch² 程度が将来の目標とされています。
6. 他の記録媒体との比較
HDDは、磁気テープや光ディスクと比べて1〜2桁高い密度を実現しています。
東和電気株式会社
住所:神奈川県平塚市代官町23−29
電話番号:0463-22-3366
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